ホームページの制作会社が倒産した・連絡が取れない——そのとき最初にやるべきことは、「ドメイン」「サーバー」「データ」の3点の名義と所在の確認です。サイトがまだ表示されているなら、サーバー契約は生きています。契約が切れてサイトが消える前に手を打てば、多くの場合は復旧・引き継ぎが可能です。
この記事では、制作会社の倒産・音信不通・対応不満のケース別対処手順、ログイン情報が何もない場合の動き方、新しい管理会社への乗り換え手順と注意点までを、経営者向けに解説します。
まず確認する3点——ドメイン・サーバー・データ
ホームページは「ドメイン(住所)」「サーバー(土地)」「データ(建物)」の3点でできています。誰の名義で、どこにあるのかが分かれば、打つ手は必ずあります。
| 確認する物 | 何を確認するか | 確認方法 |
|---|---|---|
| ドメイン(〇〇.comなど) | 名義(登録者)が自社か制作会社か。有効期限はいつか | 過去の請求書・契約書。Whois検索(ドメイン名で登録情報を照会できる無料サービス) |
| サーバー | 契約者は誰か。管理画面にログインできるか。次の更新期限はいつか | 請求書の宛先・引き落とし元。ログイン情報の社内保管有無 |
| サイトのデータ | ファイルとデータベースのバックアップが手元にあるか | 納品時のCD/ファイル、社内サーバー、過去のメール添付 |
重要なのは時間です。サーバーやドメインの契約は前払いで、制作会社が支払いを止めれば、期限切れとともにサイトは表示されなくなり、最悪ドメインは第三者に取得されます。「まだ表示されているから大丈夫」ではなく、「表示されているうちが勝負」です。
ケース別の対処手順
ケース1:制作会社が倒産・廃業した
- 上の3点(ドメイン・サーバー・データ)の名義と期限を確認する
- サイトが表示されているうちに、データを確保する(後述)
- 正式な破産手続きに入っている場合は、破産管財人(裁判所が選任した弁護士)が窓口になる。管財人経由でドメインの移管やログイン情報の引き渡しを依頼できることがある
- 管財人が不明な場合は、ドメインの登録会社(レジストラ)やサーバー会社に事情を伝えて相談する
ケース2:連絡が取れない(音信不通)
- メール・電話・郵送など複数の手段で連絡し、日時と内容を記録に残す(後の交渉や法的手続きの材料になる)
- 連絡を待つ間に、並行してデータの確保と3点の名義確認を進める(待っているだけの時間が一番危険)
- 返答がないまま契約解除や引き渡しを求める段階になったら、内容証明郵便や弁護士への相談も選択肢になる
ケース3:対応がひどい・不満があり乗り換えたい
連絡はつくが対応に不満がある場合は、感情的な決裂の前に、まず契約書で次の2点を確認してください。①解約の条件(予告期間・違約金)、②解約時に引き渡されるもの(データ・アカウント・著作権の扱い)。この2点を確認した上で、次章の乗り換え手順に進むのが安全です。ケンカ別れしてからデータを求めるのが、一番こじれるパターンです。
ログイン情報が何もない場合の動き方
「契約書もログイン情報も何もない」という状態でも、打つ手はあります。優先順位の順に並べます。
- 表示されているサイトのコピーを取る——全ページのテキスト・画像を保存しておく。サイトが消えた場合の再構築の材料になる、最低限の保険
- ドメインの名義をWhoisで確認する——名義が自社なら、登録会社に本人確認の上で管理権限の回復を相談できる。名義が制作会社の場合は、移管に正規の手続き(管財人や名義人の協力)が必要になる
- サーバー会社に契約者情報の確認を求める——請求書や引き落とし記録があれば、契約者としての地位を主張できる材料になる
- 最終手段:新ドメインでの再構築——ドメインをどうしても取り戻せない場合の選択肢。これまでの検索評価と名刺・印刷物のURLを失うため、コストは「作り直し費用+育て直しの時間」。ここに至る前に専門家(Web運用会社・弁護士)への相談を推奨します
新しい管理会社への乗り換え手順【5ステップ】
- 現状資料を集める——契約書、請求書、ログイン情報、サイトデータ。無いものは無いでよい(新会社が調査から入れる)
- 乗り換え先を決める——選ぶ基準は「契約前に聞く7つの質問」(対応範囲の書面化、バックアップ、障害時の初動、解約時の引き渡しなど)で見極める(関連記事:WordPress保守とは?作業内容・費用相場・判断基準)
- 引き継ぎを実施する——データ・アカウント一式の受け渡し。旧会社が制作したデザイン・プログラムの著作権や、有料テーマ・ライセンスの扱いをここで確認する
- ドメイン・サーバーの名義を自社にする——乗り換えのタイミングが名義正常化の最大のチャンス。ここだけは妥協しないでください
- 旧契約を解約する——新環境の動作確認が済んでから。順序を逆にするとサイトが消えます
乗り換えでつまずきやすい4つの注意点
- URLが変わる場合の転送設定(301リダイレクト)——サーバー移転やリニューアルでURLが変わるなら、転送設定をしないと検索評価がリセットされ、順位が急落することがあります
- 著作権・ライセンス——旧会社制作のデザインやプログラムの利用継続には、契約上の確認が必要な場合があります。有料テーマやプラグインのライセンスが旧会社名義のことも
- 未払い・リース契約——旧会社への未払いや、サイトのリース契約(実態は信販契約)があると引き継ぎが難航します。契約形態を先に確認
- 引き継ぎ費用——旧環境の調査・移行作業は有料が一般的です。数万円規模の引き継ぎ費用は「宙に浮いた状態を解消する保険料」と考えるのが実態に合っています
二度と「宙に浮かせない」ために——再発防止の4点
今回の事態が落ち着いたら、同じことを繰り返さない体制を作ります。ポイントは4つだけです。
- ドメイン・サーバーの名義と支払いは自社にする——管理を任せるのはよいが、所有は渡さない
- ログイン情報一覧を社内で保管する——WordPress管理画面・サーバー・ドメイン登録会社の3点。担当者の退職に備えて保管場所を決めておく
- 保守の中身を書面にする——「何をして、何をしないか」と解約時の引き渡し条件。費用の考え方は別記事で解説しています(関連記事:ホームページの保守費用はいくら?月額相場と内訳)
- 放置期間の「健康状態」を確認する——管理が宙に浮いていた期間は、更新も監視も止まっていた期間です。溜まった脆弱性がないか、まず現在地を確認してください
当サイトの無料診断は、URLを入力するだけで、外部から確認できる17項目を点検し危険度スコアを表示します。ログイン情報が無い状態でも使えるため、「何も分からないが現状だけ知りたい」という乗り換え検討時の第一歩に向いています。
よくある質問
Q. 制作会社が倒産したら、ホームページはすぐ消えますか?
すぐには消えません。サーバーとドメインの契約期間が残っている間は表示され続けます。ただし次の更新時期に支払いが行われなければ停止します。猶予期間の長さは分からないことが多いため、「表示されているうちにデータ確保と名義確認」が鉄則です。
Q. ドメインの名義が制作会社になっていました。取り返せますか?
正規の手続き(名義人の協力、倒産時は破産管財人経由の移管など)を踏めば取り戻せるケースは多くあります。ただし名義人と連絡が取れない場合は難航し、時間もかかります。ドメイン登録会社への相談と並行して、期限切れ後に第三者に取得されるリスクに備え、早めに動いてください。個別の法的判断は弁護士にご相談を。
Q. データを引き渡してもらえないまま解約してもいいですか?
契約書のデータ引き渡し・著作権の規定を先に確認してください。規定がない場合も交渉で引き渡されるケースは多いため、解約通告の前に「引き渡し条件の確認」を挟むのが安全です。決裂してからでは協力を得にくくなります。
Q. 乗り換えの費用はどれくらいかかりますか?
旧環境の調査・データ移行・設定で数万円規模の引き継ぎ費用がかかるのが一般的です(サイト規模と資料の有無で変動)。その後の保守費用は月額1〜3万円が中心帯です。
Q. 何年も放置されていたサイトです。セキュリティが心配です。
妥当な心配です。管理が止まっていた期間は、WordPressやプラグインの更新も止まっており、公表済みの脆弱性が溜まっている可能性があります。無料診断で外側から確認できる問題を先に把握し、乗り換え先にその結果を渡すと話が早く進みます。
まとめ——「表示されているうち」に動く
制作会社の倒産・音信不通は、慌てる必要はありませんが、放置は禁物です。サーバー契約の期限が静かに迫っているからです。今日やるべきことは次の3つです。
- ドメイン・サーバー・データの名義と期限を確認する——請求書とWhoisで今日調べられます
- サイトが表示されているうちにコピーを確保する——最低限の保険になります
- 無料診断で放置期間の健康状態を確認する——URLを入れるだけ。乗り換え相談の材料にもなります

この記事を書いた人
Spyral(スパイラル)/「サイトの主治医」運営 代表 佐藤 秀之
2011年創業、東京都八王子市。情報セキュリティコンサルティング会社でシニアコンサルタントを務めた後に独立し、中小企業のWEB集客・サイト運用を14年支援。ゼロトラスト・セキュリティの研究(Zero Trust Resilience Lab)と現場経験をもとに、WordPress保守・脆弱性診断サービス「サイトの主治医」を運営しています。運営者情報 →
本記事は2026年7月時点の一般的な実務手順の解説です。破産手続き・著作権・契約解除に関する個別の法的判断は、弁護士等の専門家にご相談ください。
