【PR】本記事には、書籍『Project Zero Trust』のアフィリエイトリンク(Amazon)を含みます。
本記事は書籍『Project Zero Trust』(George Finney)を題材にした技術補講です。本の内容に触れるのは出版社の公開資料(書籍紹介・目次・第1章の試し読み)で確かめられる範囲にとどめ、DAASモデルは John Kindervag の方法論として紹介します。リンク先の物語連載の場面や台詞の描写は運営者による脚色を含み、本の原文の引用ではありません。
『Project Zero Trust』の第4章には「The Crown Jewels(王冠の宝石)」という章題が付いています。守るべきもの(Protect Surface)を先に決めることは、ゼロトラストを考案した John Kindervag の方法論でも最初の手順です。
しかし、多くの日本企業の情シス担当者はこう悩みます。
「守るべきものが何かなんて、誰も把握していない……」
シャドーIT、各部署が勝手に契約したSaaS、机の引き出しに眠る古いスマホ。
これらを整理するために、高価な資産管理ツールは必要ありません。まずは「Excel(またはGoogleスプレッドシート)」を開いてください。
今回は、John Kindervag が提唱したDAASモデルを日本企業向けにアレンジした「資産棚卸しシート」のテンプレートを公開します。
この記事は『Project Zero Trust』特集の一部です。全記事一覧はこちら↓
1. DAASモデルとは?(復習)

John Kindervag のゼロトラストの方法論では、守るべき機微な資源(Protect Surface に含めるもの)を、次の4種類(DAAS:Data, Applications, Assets, Services)で捉えます(米国 NSTAC「Report to the President on Zero Trust and Trusted Identity Management」)。
これらを「ごちゃ混ぜ」にするのではなく、カテゴリごとに分けて管理するのがコツです。
DAASモデルを物語仕立てで紹介した翻案(運営者による脚色)は、【物語連載】Vol.3 設計編にあります。
2. 実践!「DAAS棚卸しシート」の項目定義

新しいシートを作成し、1行目に以下のヘッダーを作ってください。
これが「ゼロトラストへの地図」になります。下の表の2行目以降は記入例(架空)です。
| A列: DAAS分類 | B列: 資産名 | C列: 利用部署/オーナー | D列: 重要度 (H/M/L) | E列: 現状のアクセス制御 |
|---|---|---|---|---|
| Data | 顧客台帳(2025年度版) | 営業部 / 佐藤部長 | High | ファイルサーバー(全部署アクセス可) |
| Application | 勤怠管理(SaaS) | 人事部 / 鈴木課長 | Medium | ID/Passのみ (MFAなし) |
| Asset | 社長用iPad | 経営企画室 | High | パスコード4桁 |
| Service | DNSサーバー | 情シス | High | ファイアウォール内 |
ポイント:全部書こうとしないこと
完璧を目指すと挫折します。まずは「重要度:High(これが漏れたら会社が潰れる)」のものだけを埋めてください。それがあなたの守るべき「クラウン・ジュエル(王冠の宝石)」です。
3. 「E列(現状)」を見て絶望しよう

このシートを作ると、恐ろしい事実が見えてきます。
この「資産の価値(High)」と「防御の薄さ」のギャップ(Gap Analysis)こそが、あなたが次にやるべき仕事です。
「全員のPCにウイルスソフトを入れる」より先に、「顧客台帳のアクセス権を営業部だけに絞る」ことを検討してください。追加のツール費用をかけずに、効果の大きい対策から手を付けられます。
棚卸しで特定した資産を監視で守る方法は、技術補講の「3つの監視ダッシュボード」をMicrosoft Sentinelで作ってみた記事で紹介しています。
まとめ:Excelは「生きた文書」にする

この棚卸しは、一度作って終わりではありません。
四半期に一度、各部署のマネージャーにこのシート(の一部)を送り、「増えたSaaSはないですか?」「退職者のIDは消えていますか?」と確認してください。
高価なCMDB(構成管理データベース)を買うのは、この運用がExcelで回らなくなってからで十分です。
まずは今日、空白のシートを開くことから始めましょう。
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最終更新:2026年10月1日(出版社の公開資料・公的資料・一次情報に基づき事実関係を修正)


