「最強のファイアウォールは、社員の『違和感』だ。」
ランサムウェア被害からの復旧、ゼロトラスト・アーキテクチャの導入、そしてSOCによる監視。
半年が過ぎ、March Fitness社のセキュリティは鉄壁になった……かに見えた。
しかし、主人公ディランは知っている。システムが完璧でも、人間が「自分には関係ない」と思った瞬間にすべてが崩れ去ることを。
最終回は、本書の第9章・第10章で語られる、ゼロトラストの最終到達点「文化(Culture)」と「演習(Exercise)」についてだ。
この記事は『Project Zero Trust』特集の一部です。全記事一覧はこちら↓
Scenario:静かなる「避難訓練」

ある晴れた金曜日の午後、ディランは役員たちを会議室に集め、1枚の紙を配った。
そこにはこう書かれていた。
【シナリオ】
「たった今、CEOが海外出張先でノートPCを紛失しました。そのPCには未発表の新製品データが入っています。
さあ、誰が、何を、どの順番で判断しますか?」
会議室は静まり返った。
技術的には「リモートワイプ(遠隔消去)」ができる。しかし……。
結局、議論だけで2時間が過ぎた。
もしこれが本番なら、データはその間にダークウェブで売られていただろう。
ディランは静かに告げる。
「これが我々の現在の実力です」
Insight:技術は買えるが、文化は育てるしかない

本書の第10章「The Tabletop Exercise」が教える教訓は痛烈だ。
ゼロトラスト機器(SASEやEDR)は、設定さえすれば24時間働いてくれる。
しかし、「異常事態にどう動くか」という判断プロセス(文化)は、ベンダーから買うことができない。
攻撃者は、システムではなく「組織の隙間」を突いてくる。
これらを埋めるのは、最新ツールではなく「日頃の訓練」だけなのだ。
ZTR Solution:終わりのない旅(Journey)へ

ZTRラボが、この連載の最後にあなたに贈るアドバイスは2つある。
1. 「机上訓練(Tabletop Exercise)」をやれ
お金はかからない。必要なのは会議室と「意地悪なシナリオ」だけだ。
「ランサムウェアで全サーバーが暗号化されました。身代金要求は1億円。支払期限は24時間。さあどうする?」
これを半年に1回やるだけで、組織の対応力(レジリエンス)は劇的に上がる。
2. 「完了」はないと知れ
ディランの物語にエンディングはない。
ゼロトラストは、一度導入して終わりのプロジェクトではなく、「脅威の変化に合わせて、自らを書き換え続ける生存戦略」だからだ。
NIST SP 800-207の図を壁に貼り、毎朝問いかけろ。
「今日の私たちは、昨日より少しだけ『誰も信頼しない(Verify Explicitly)』状態に近づけたか?」
Action:物語をあなたの会社へ

これで『Project Zero Trust』の解読は終了だ。
しかし、現実の戦いはここから始まる。
あなたの会社には、ディランのようなCTOはいないかもしれない。予算もないかもしれない。
だが、「侵入前提で考える」という意思を持ったその瞬間から、あなたは組織を守る参謀になれる。
もし、旅の途中で道に迷ったら、いつでもZTRラボの扉を叩いてほしい。
我々は、孤独な戦いを続けるあなたのための「作戦司令室」であり続ける。
~完~
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