~「ご案内」という名の「宣戦布告」~
ある日、情シス担当者の受信トレイに届く1通のメール。
件名は「サービス価格改定のお知らせ」。
中を開くと、丁寧な言葉遣いでこう書かれています。
「昨今の為替変動および開発コストの高騰に伴い、来年度の更新分よりライセンス料を 1.5倍(またはドル建て請求) に改定させていただきます」
この瞬間、あなたの脳裏をよぎるのは「予算オーバー」の絶望と、「今さら他社に乗り換える工数なんてない……」という諦めでしょう。
ベンダーもそれを知っています。
一度導入したら抜け出せない「ベンダーロックイン」の状態にある顧客は、多少値上げしても逃げない。そう高をくくっているのです。
はっきり言います。このメールは「ご案内」ではありません。
「お前はカモだ」という宣戦布告です。
ZTRラボは、理不尽な値上げに対して白旗を上げることを推奨しません。
戦いましょう。武器は「解約のカード(Bluff)」と「断捨離(Downsizing)」です。
Phase 1:「検討します」はカモの言葉

それは「社内で検討します(We will consider it)」です。
これはベンダー語に翻訳すると「嫌だけど、受け入れる方向で調整します」という意味になります。
彼らは「しめしめ、今回もチョロいな」と思い、強気の姿勢を崩しません。
交渉の第一声は、こうあるべきです。

その上げ幅は予算承認が下りません。現在、他社製品への移行(マイグレーション)プロジェクトを立ち上げました
嘘でもいいのです。まずは「逃げない客」ではなく「逃げる客」であることを示してください。
ベンダーにとって最も恐ろしいのは「解約(Churn)」です。この一言で、相手の態度は「通告」から「引き留め」に変わります。
Phase 2:ブラフではない「解約のカード」を作る

「移行準備中」と言った以上、証拠を見せる必要があります。
口先だけだとバレれば、余計に足元を見られます。
1週間で「競合のPoC」環境を作る
本気で乗り換える気がなくても、競合他社(または無料のOSS)のトライアル版を申し込み、テスト環境を立ち上げてください。
そして、ベンダーとの定例会で、わざと「他社製品の画面キャプチャ」が映り込んだ資料を見せるのです。
あるいは、「データのエクスポート仕様について教えてください。移行検証で必要なので」とサポートに問い合わせてください。

こいつ、本気だ……
そう思わせれば勝ちです。数日後、営業担当が飛んできて「特別な割引プラン」を提示してくるでしょう。
Phase 3:機能の「断捨離(Downsizing)」

値上げの理由が「新機能の追加」である場合も多いですが、その機能、本当に使っていますか?
ベンダーは最上位の「プレミアムプラン」や「スイート製品」を売りたがります。
しかし、ログ監査をしてみると、社員の9割は基本的な機能しか使っていないことがほとんどです。
▼ 交渉材料:「ログ」という事実

御社の監査ログを分析しましたが、今回値上げの理由となっている『AI分析機能』を使っているユーザーは全社の1%未満でした。この機能は不要なので、下位プランへのダウングレードを希望します。
不要な贅肉を削ぎ落とせば、単価が上がっても総額(Total Cost)を抑えることができます。
Phase 4:長期契約のバーター(人質交換)

どうしても他社に乗り換えられない、かつ機能も削れない場合。
最後の手段は「時間を売って金を安くする」ことです。
ベンダー(特にSaaS)は、ARR(年間経常収益)の安定を好みます。
「単年度契約」ではなく「3年契約(または5年契約)」を結ぶ代わりに、「契約期間中の値上げなし」または「大幅なディスカウント」を確約させるのです。
ただし、注意点があります。
これを入れずに長期契約すると、逆に新たな「監獄」に入ることになります。
まとめ:財布の紐はあなたが握っている
「値上げは決定事項です」と言われても、諦めないでください。
契約書にハンコを押すまでは、決定事項ではありません。
彼らにとって、既存顧客を失うコストは、新規顧客を獲得するコストの5倍とも言われています。
あなたが「解約」をチラつかせた瞬間、パワーバランスは逆転します。
情シスは「コストセンター」と揶揄されがちですが、不当なコスト増を食い止めるあなたは、立派な「プロフィット(利益)を生む守護神」です。
堂々と戦ってください。

