【技術補講】ゼロトラストの第一歩は「Excel」から。守るべき資産を特定する『DAAS棚卸しシート』の作り方

Project Zero Trust

Project Zero Trust』のChapter 4で、主人公ディランは「守るべきもの(Protect Surface)」を決めずに防御機器を買うことの愚かさを指摘されます。

しかし、多くの日本企業の情シス担当者はこう悩みます。
「守るべきものが何かなんて、誰も把握していない……」

シャドーIT、各部署が勝手に契約したSaaS、机の引き出しに眠る古いスマホ。
これらを整理するために、数百万円の資産管理ツールは必要ありません。まずは「Excel(またはGoogleスプレッドシート)」を開いてください。

今回は、本書のDAASモデルを日本企業向けにアレンジした「資産棚卸しシート」のテンプレートを公開します。

この記事はProject Zero Trust特集の一部です。全記事一覧はこちら↓

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1. DAASモデルとは?(復習)

ゼロトラストでは、資産を以下の4つに分類します。

  1. Data(データ): クレジットカード情報、設計図、顧客リスト。
  2. Assets(アセット): PC、サーバー、IoT機器、スマホ。
  3. Applications(アプリケーション): Salesforce、Zoom、自社開発ソフト。
  4. Services(サービス): Active Directory、DNS、DHCP。

これらを「ごちゃ混ぜ」にするのではなく、カテゴリごとに分けて管理するのがコツです。

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2. 実践!「DAAS棚卸しシート」の項目定義

新しいシートを作成し、1行目に以下のヘッダーを作ってください。
これが「ゼロトラストへの地図」になります。

A列: DAAS分類B列: 資産名C列: 利用部署/オーナーD列: 重要度 (H/M/L)E列: 現状のアクセス制御
Data顧客台帳(2025年度版)営業部 / 佐藤部長Highファイルサーバー(全部署アクセス可)
Application勤怠管理(SaaS)人事部 / 鈴木課長MediumID/Passのみ (MFAなし)
Asset社長用iPad経営企画室Highパスコード4桁
ServiceDNSサーバー情シスHighファイアウォール内

ポイント:全部書こうとしないこと

完璧を目指すと挫折します。まずは「重要度:High(これが漏れたら会社が潰れる)」のものだけを埋めてください。それがあなたの守るべき「クラウン・ジュエル(王冠の宝石)」です。

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3. 「E列(現状)」を見て絶望しよう

このシートを作ると、恐ろしい事実が見えてきます。

  • 事例: 「顧客台帳(High)」が、「ファイルサーバー」にあり、実は「アルバイト含む全員」がアクセス権を持っていた。
  • 事例: 「社長用iPad(High)」が、MDM(管理ツール)に入っておらず、紛失したらリモートワイプできない。

この「資産の価値(High)」「防御の薄さ」のギャップ(Gap Analysis)こそが、あなたが次にやるべき仕事です。
「全員のPCにウイルスソフトを入れる」よりも、「顧客台帳のアクセス権を営業部だけに絞る」ほうが、コストゼロでセキュリティは劇的に向上します。

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まとめ:Excelは「生きた文書」にする

この棚卸しは、一度作って終わりではありません。
四半期に一度、各部署のマネージャーにこのシート(の一部)を送り、「増えたSaaSはないですか?」「退職者のIDは消えていますか?」と確認してください。

高価なCMDB(構成管理データベース)を買うのは、この運用がExcelで回らなくなってからで十分です。
まずは今日、空白のシートを開くことから始めましょう。

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原作に興味を持った方へ

この連載の元となった書籍『Project Zero Trust』は、技術書とは思えないほどドラマチックな小説です。 詳しい内容はこちらの書評記事で紹介しています。

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