~ その表、誰が作ったんですか?~
製品選定のプレゼンで、必ずと言っていいほど出てくるスライドがあります。
そう、「競合比較表」です。
縦軸に機能一覧、横軸に競合他社(A社、B社)。
そして提案しているベンダーの列には、誇らしげにすべての項目に「青い◯(または二重丸)」が並び、競合他社の列には無慈悲な「×」や「△」が並んでいます。
私はこの表を見るたびに思います。
「そんなわけあるか」と。
世界的なシェアを持つ競合製品が、そんなに「×」だらけのポンコツなわけがありません。
この表は、そのベンダーが「自社が勝てる土俵(機能)」だけをピックアップして作った、極めて偏ったプロパガンダです。
この表を信じて製品を選定すると、導入後に必ず後悔します。
「機能はあるけど、使いにくすぎて運用に乗らない」
「×になっていた競合製品の方が、実は今の環境に合っていた」
本記事では、この歪んだ比較表を論破し、本当の実力を暴くための「嘘を見抜く技術」を伝授します。
Phase 1:その「○」の定義は何ですか?

比較表の「○(機能あり)」は、あくまで「スペックシート上にその機能が存在する」という意味でしかありません。
情シスにとって重要なのは「あるかどうか」ではなく、「現場で使えるかどうか(Usability)」です。
例えば「ログ検索機能:○」となっていたとします。
しかし実態は、「専用の構文(クエリ)を覚えないと検索できない」かもしれません。
あるいは、「検索結果が出るのに5分かかる」かもしれません。
▼ こう質問してください
「この機能の『設定画面』のスクリーンショットを見せてください」
「この機能を使って、実際にログを調査するデモ動画はありますか?」
GUI(管理画面)を見せるのを渋り、カタログスペックだけで語ろうとする場合、その「○」は「あるにはあるが、使い物にならない(実質×)」と判断すべきです。
Phase 2:「マジック・クアドラント」の罠

ベンダーは権威が大好きです。
「ガートナーのマジック・クアドラントでリーダーに選ばれました!」と胸を張ります。
確かに「リーダー」であることは素晴らしいですが、それは「あなた(日本の中堅企業)にとってベストである」こととイコールではありません。
グローバルリーダー製品の多くは、大企業向けに作られています。
「リーダーかどうか」ではなく、「自社の規模(身の丈)に合っているか」で判断してください。
時には、ニッチなプレイヤーの方が、あなたの痒い所に手が届く場合があります。
Phase 3:ZTR流「逆提案書(RFP)」のススメ

相手が作った土俵(比較表)に乗るから負けるのです。
土俵は自分で作りましょう。
ベンダーのフォーマットに記入させるのではなく、こちらが用意した「ユースケース(シナリオ)」を投げつけ、それに対する回答で比較するのです。
▼ ZTR流・簡易RFP(提案依頼書)の例
シナリオ1: 「社員が誤ってフィッシングメールのリンクを踏んだ時、管理者はどの画面でそれを検知し、何クリックで端末を隔離できますか?」
シナリオ2: 「VPN障害が発生した際、ユーザーはどのような手順で代替経路に接続しますか? マニュアル不要で直感的に操作できますか?」
これに対して、「機能Aで対応可能」といった一言回答ではなく、「具体的な手順」を書かせてください。
これで初めて、製品ごとの「解像度の高い比較」が可能になります。
Phase 4:隠された「×」を暴く

最後に、営業担当者の誠実さをテストする最強の質問があります。

御社製品が、競合他社に比べて『負けている点(苦手なこと)』を3つ教えてください。
完璧な製品など存在しません。必ず弱点はあります。
「UIが少し古い」「レポート機能が弱い」「価格が高い」……。
信頼できるパートナーなら、これらを正直に話してくれた上で、「その代わり、検知精度は最強です」と提案してくれます。
逆に、「ありません! 全てにおいて勝っています!」と答える営業担当者は、自社製品を理解していないか、あなたを騙そうとしているかのどちらかです。
「弱点」を知ることは、導入後のトラブル回避に直結します。
ネガティブな情報を隠すベンダーとは、付き合ってはいけません。
まとめ:選ぶのは「比較表」ではなく「あなた」だ
比較表は、あくまでベンダーの「広告」です。
そんな紙切れ一枚で、会社の命運を左右するセキュリティ製品を選んではいけません。
自分の目で見て(デモ)、自分の手で触って(PoC)、自分の頭で考えた(シナリオ検証)結果だけを信じてください。
嘘を見抜き、ノイズを排除し、本当に必要な「武器」を選び取る。
それもまた、参謀(情シス)の重要な任務です。
🛡️ 追伸:選定基準(ものさし)を持っていますか?
「そもそも、自社にどんな機能が必要なのか、要件定義ができない……」
そう悩む方は、製品を見る前に「設計図」を描く必要があります。
- 設計思想を学ぶなら:
守るべき資産(Crown Jewels)を定義し、そこから逆算して必要な機能を洗い出す。
その設計プロセスを物語で解説した
👉【物語連載】Vol.3 設計編:「なんとなく」を許さないアーキテクチャ
を読んでください。 - 要件を整理するなら:
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👉 DAAS資産棚卸しシート(Excel)
を活用し、「何を守るために、どんな道具が必要か」を可視化してください。

