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SASEとゼロトラストの違い|SSE・ZTNAとの関係と、中小企業に必要かの判断

夜明けの港で、大きな1隻の船に、色の違う小さなコンテナがまとめて積み込まれている風景(ネットワークとセキュリティを1つにまとめる比喩・文字なし) ゼロトラスト実装ガイド

ゼロトラストは、社内か社外かで信頼を決めず、アクセスのたびに確かめる「考え方」です。SASE(Secure Access Service Edge、一般に「サシー」と読む)は、ネットワークの機能とセキュリティの機能をまとめて、主にクラウドのサービスとして提供する「仕組み」です。

SASE は、ゼロトラストの考え方でアクセスを守るための手段の1つですが、ゼロトラストに必須のものではありません。ゼロトラストの代表的な資料である NIST SP 800-207 にも、CISA の成熟度モデルにも、SASE という言葉は出てきません。

中小企業にとっての答えは、拠点が少なくクラウド中心なら、まず多要素認証や更新などの基本を固め、SASE は必要になってから検討すれば十分、ということです。 この記事では、一次情報で定義を確かめたうえで、関連する用語の関係と、判断の目安をまとめます。

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SASEとゼロトラストの違い

大きな円の中に、小さな角丸の四角が1つ入っている入れ子の形の白背景の図解(日本語ラベル2個:考え方・仕組み)

ゼロトラストは「どう守るか」の考え方、SASE は「その考え方でアクセスを守るために、ネットワークとセキュリティをまとめて提供する」仕組みです。 主な違いを表にまとめます。

比べる点ゼロトラストSASE
何か設計の考え方ネットワークとセキュリティの機能をまとめた仕組み・サービス
代表的な資料NIST SP 800-207(2020年8月)Gartner の用語、NIST SP 800-215(2022年11月)、MEF の標準(2022年10月)
中身場所で信頼せず、アクセスのたびに確かめる原則SD-WAN などの通信の機能と、Webやクラウドの利用を守る機能、アプリへのアクセス制御など
提供の形特定の製品ではない主にクラウドのサービスとして提供される
中小企業での位置づけすべての会社が考え方として取り入れられる拠点や社外からのアクセスが多い会社で、手段の1つとして検討する

ゼロトラストの考え方は、ゼロトラストの7つの原則で詳しく説明しています。

SASEとは:出所と定義

1つの大きな角丸の枠の中に、5つの小さな四角を横一列に並べた白背景の図解(英語の略語ラベル5個:SD-WAN・SWG・CASB・FW・ZTNA)

SASE は、2019年に調査会社 Gartner が作った言葉です。 NIST SP 800-215 は、Gartner が2019年に「secure access service edge(SASE)」という言葉を作ったと説明しています。

Gartner の定義

Gartner の用語集は、SASE を、SD-WAN、SWG、CASB、NGFW、ZTNA などのネットワークとセキュリティの機能を、まとめてサービスとして提供するものと定義しています。主にサービスとして提供され、端末や利用者の ID、そのときの状況、方針にもとづいてアクセスを許すとしています。

なお、2026年10月30日時点では、Gartner の用語集のページは別のページに転送されて定義が表示されません。この記事では、ウェブ・アーカイブ(Wayback Machine)に保存された同じページで確認しています。

NIST の説明

NIST SP 800-215 は、SASE を、広域のネットワークとさまざまなセキュリティのサービスを提供する包括的な枠組みを指す、業界の言葉としています。そのうえで、SASE が提供するネットワークとセキュリティのサービスは新しいものではなく、個別の製品ではなく1つのパッケージとしてまとめて提供されるものだと書いています。

また、多くの市販の SASE に見られる最低限のセキュリティのサービスとして、ファイアウォール、セキュアWebゲートウェイ(SWG)、マルウェア対策、侵入防止(IPS)、CASB、情報漏えい対策(DLP)を挙げています。NIST が SASE の要件として定めたものではありません。

業界標準(MEF)

通信事業者などの業界団体 MEF は、2022年10月に SASE の標準「MEF 117」を出しました。MEF は2025年6月に名前を Mplify Alliance に変え、この標準も同じ月に改訂版の「Mplify 117.1」に置き換えられています。改訂版では、SD-WAN は推奨で、必須ではないとしています。

SSE・ZTNA・CASBなど、用語の関係

白背景に、上下に並べた2つの横長の枠のうち、上の枠には2つの小さな四角、下の枠には1つの小さな四角が入っている比較の図解(ラベル4個:SASE・SSE・通信・セキュリティ)

SASE の解説には、似た略語がたくさん出てきます。 Gartner の用語集などをもとに、主なものをまとめます。

用語読み・正式名意味
SASEサシー(Secure Access Service Edge)ネットワークとセキュリティの機能をまとめて、主にサービスとして提供する仕組み
SSESecurity Service EdgeWeb・クラウドサービス・社内のアプリへのアクセスを守る機能をまとめた、主にクラウドのサービス
SD-WANSoftware-Defined WAN拠点どうしやクラウドへの通信を、ソフトウェアで制御・最適化する仕組み。中心は通信の機能(製品によってはファイアウォールなどのセキュリティの機能を備えるものもある)
SWGセキュアWebゲートウェイ社員の Web 閲覧の通信を中継して検査し、危険なサイトなどへのアクセスを止める仕組み
CASBCloud Access Security Brokerクラウドサービスの利用を見える化し、制御する仕組み
NGFW/FWaaS次世代ファイアウォール/クラウドで提供するファイアウォール通信を検査して止める仕組み
ZTNAZero Trust Network Accessアプリ(またはアプリのまとまり)の周りに、ID と状況にもとづくアクセスの境界を作る製品やサービス

Gartner の定義を並べると、SASE には SD-WAN などの通信の機能が含まれ、SSE の定義には通信の機能が含まれていません。拠点どうしの通信を整える必要がなければ、SASE ではなく SSE や ZTNA の範囲で考えられる場合があります。

ZTNA の意味は資料によって幅がある

Mplify の改訂版の標準は、自分たちの ZTNA の定義は業界で一般に受け入れられている定義と異なると断ったうえで、Gartner の定義では ZTNA がリモートアクセスや VPN の置き換えとほぼ同じ意味になっていると説明しています。NIST SP 800-215 は、ZTNA をゼロトラストにもとづく通信の考え方として扱っています。

製品の説明で ZTNA という言葉が出てきたら、どの範囲のアクセスを指しているのかを確かめてください。VPN と ZTNA の関係は、ゼロトラストとVPNの違いで解説しています。

ゼロトラストにSASEは必須ではない

木の作業台の上に、大きな工具箱と、必要な道具だけを入れた小さな工具袋が並んで置かれている静物(文字なし)

ゼロトラストを始めるのに、SASE を入れる必要はありません。 ゼロトラストの代表的な資料である NIST SP 800-207 と、CISA の Zero Trust Maturity Model v2.0 には、SASE・SSE・ZTNA という言葉が一度も出てきません。どちらも、特定の製品ではなく考え方や進め方を示しています。

日本の公的資料でも、SASE は選択肢の1つとして触れられている程度です。

  • デジタル庁の「ゼロトラストアーキテクチャ適用方針」は、テレワークを前提にネットワークの統制を強めたい場合の施策の例として、SASE などのソリューションを全業務デバイスに導入することを挙げています。
  • 文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」は、ネットワークとセキュリティを統合してクラウドサービスとして提供する SASE というサービスモデルも出てきていると紹介しています。
  • IPA の「ランサムウェア被害から学ぶ教訓集」は、被害の後に、海外拠点とのネットワーク接続も含めて SASE を活用するなど、比較的新しいサービスの導入を進めたケースもあったとしています。
  • 総務省の「テレワークセキュリティガイドライン」は、SASE という言葉は使わず、クラウドサービスを使うテレワークの方式について、クラウドプロキシや CASB の導入を検討する必要があると書いています。

中小企業にSASEは必要か

事務所の入口の傘立てに、大きさの違う3本の傘が立てられている静物(文字なし)

SASE が向いているかどうかは、拠点の数と、社外から社内の仕組みにつなぐ人の多さで決まります。 当サイトの目安は次のとおりです(公的な基準ではありません)。

自社の状況目安
拠点は1つ。メール・ファイル・業務アプリはほぼクラウドで、社外から社内のサーバーにつなぐ人はいないSASE は不要。多要素認証・更新・アカウントの整理など、基本の対策を優先する
拠点は1つ。社内にサーバーが残っていて、社外からつなぐ人がいるまずVPNの守りを固める。VPNを減らす段階で、ZTNA や SSE を検討する
拠点が複数ある、海外拠点がある、拠点ごとのネットワーク機器の管理が負担になっているSASE(通信の機能を含む)を検討する価値がある

どの場合でも、SASE を入れる前に、何を守るか(資産)と、誰がどこからアクセスするかを整理しておく必要があります。順番の考え方は、ゼロトラストの7つの原則の「中小企業ならどこまでやるか」で紹介しています。

ZTNA などの部品が、ゼロトラストの構成図のどこに当たるかは、ゼロトラストの構成図で整理しています。

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費用の考え方

明るい窓辺に、水の量が少しずつ違う3つの無地のガラス瓶が並んで置かれている静物(文字・数字なし)

SASE や SSE の価格について、公的機関や中立な立場の目安は、2026年10月30日時点で当サイトが調べた範囲(NIST・業界標準・CISA・日本の公的資料)では見つかりませんでした。 料金は、利用者数、使う機能、拠点の数、契約の形で大きく変わります。導入を検討するときは、同じ条件で複数の見積もりを取り、初期費用と月額費用、最低の契約期間を比べてください。

公的な物差しとして参考になるのは、IPA の「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の基準です。1類のサービスについて、中小企業でも導入・維持できる価格として、ネットワーク監視型は月額1万円(税抜)以下、初期費用は50万円(税抜)以下などの上限を定めています。ただし、お助け隊は監視・駆けつけ・保険などをまとめたサービスで、SASE とは中身が違います。

よくある質問

明るい事務所の机の上で、無地の卓上ライトがやわらかく灯っている静物(文字なし)
Q
SASEとゼロトラストの違いは何ですか?
A

ゼロトラストは考え方で、SASE はその考え方でアクセスを守るために、ネットワークとセキュリティの機能をまとめて提供する仕組みです。 SASE は主にクラウドのサービスとして提供されます。

Q
SASEの読み方は?
A

一般に「サシー」と読まれます。 正式名は Secure Access Service Edge です。

Q
SASEとSSEの違いは何ですか?
A

Gartner の定義では、SASE には SD-WAN などの通信の機能が含まれ、SSE の定義には通信の機能が含まれていません。 SSE は、Web・クラウドサービス・社内のアプリへのアクセスを守る機能が中心です。

Q
ゼロトラストを始めるにはSASEが必要ですか?
A

必要ではありません。 NIST SP 800-207 や CISA の成熟度モデルには SASE という言葉は出てこず、多要素認証や更新、権限の整理などから始められます。

Q
中小企業はSASEを入れるべきですか?
A

拠点が少なく、クラウド中心で、社外から社内のサーバーにつなぐ人がいなければ、急いで入れる必要はありません。 拠点が複数ある場合や、VPNの管理が負担になっている場合に検討してください。

まとめ:SASEは手段の1つ。必要かどうかは自社の形で決める

朝の金色の光の中、静かな港の桟橋に小さな船が1隻停まっている風景(日常に戻った安心感・文字なし)

SASE はゼロトラストの「答え」ではなく、ゼロトラストの考え方でアクセスを守るための手段の1つです。

  • ゼロトラストは考え方、SASE はネットワークとセキュリティをまとめて提供する仕組み
  • SASE は2019年に Gartner が作った言葉で、NIST SP 800-215 や業界標準(MEF・Mplify)でも説明されている
  • SSE は Web・クラウドサービス・社内のアプリへのアクセスを守るセキュリティの機能が中心で、Gartner の SSE の定義には通信の機能が含まれていない
  • ゼロトラストに SASE は必須ではない。拠点が少なくクラウド中心の中小企業は、基本の対策を先に固める

自社にどんな入口があり、何から直すかは、入口診断で確かめられます。製品の提案が自社に合っているか第三者に見てほしい場合は、セカンドオピニオンも用意しています。社長が相談の前に、自社の現在地を自分で整理できる予習ワークブックも準備しています(予約受付中・登録無料)。

出典一覧(確認日:すべて2026年10月30日)

  • NIST「SP 800-215 Guide to a Secure Enterprise Network Landscape」(2022年11月):https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/SpecialPublications/NIST.SP.800-215.pdf
  • NIST「SP 800-207 Zero Trust Architecture」(2020年8月):https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/SpecialPublications/NIST.SP.800-207.pdf
  • Gartner 用語集「Secure Access Service Edge (SASE)」(ウェブ・アーカイブ、2025年10月6日保存):https://web.archive.org/web/20251006015116/https://www.gartner.com/en/information-technology/glossary/secure-access-service-edge-sase
  • Gartner 用語集「Security Service Edge (SSE)」(ウェブ・アーカイブ、2025年3月9日保存):https://web.archive.org/web/20250309044001/https://www.gartner.com/en/information-technology/glossary/security-service-edge-sse
  • Gartner 用語集「Zero Trust Network Access (ZTNA)」(ウェブ・アーカイブ、2024年12月28日保存):https://web.archive.org/web/20241228070906/https://www.gartner.com/en/information-technology/glossary/zero-trust-network-access-ztna-
  • MEF「MEF 117 SASE Service Attributes and Service Framework」(2022年10月):https://www.mplify.net/wp-content/uploads/MEF-117.pdf
  • Mplify「Mplify 117.1 SASE Service Attributes and Service Framework」(2025年6月):https://www.mplify.net/wp-content/uploads/Mplify-117.1.pdf
  • Mplify「Mplify Emerges as New Brand for MEF」(2025年6月24日):https://www.mplify.net/news/mplify-emerges-as-new-brand-for-mef-reflects-bold-vision-for-the-ai-driven-digital-economy
  • CISA「Zero Trust Maturity Model Version 2.0」(2023年4月):https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-04/zero_trust_maturity_model_v2_508.pdf
  • デジタル庁「ゼロトラストアーキテクチャ適用方針」(DS-210、2022年6月30日):https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/5efa5c3b/20220630_resources_standard_guidelines_guidelines_04.pdf
  • 文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(令和7年3月):https://www.mext.go.jp/content/20250325-mxt_jogai01-100003157_1.pdf
  • IPA「ランサムウェア被害から学ぶ教訓集」Ver.1.2:https://www.ipa.go.jp/security/todokede/crack-virus/ransomware_lessons_learned.html
  • 総務省「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」(令和3年5月):https://www.soumu.go.jp/main_content/000752925.pdf
  • IPA「サイバーセキュリティお助け隊サービス基準(2.1版)」(令和7年9月8日):https://www.ipa.go.jp/security/sme/otasuketai/nq6ept000000faii-att/000092713.pdf
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